四行ミステリ感想

絶園のテンペスト:城平京

(※四行でもなんでもない) 先月号で絶園の特別編も完結して、もう咲も終わっているので、ガンガンを買う理由がなくなりました。 本屋でそれをしみじみと思ったので、改めて、絶園のテンペストの感想。 終わってみれば結局、スパイラルや十字界と同様。 「絶…

Fate/Apocrypha:東出祐一郎

いやね、一年ぐらい更新もせずになにしてたかっていうとね、まあ色々なんですよ 仕事したり、ゲームしたり、仕事したり、漫画よんだり、仕事したり、ラノベ読んだり いやいや、ミステリ読めよ! って感じなんだけどさ っていうか、文末に。を付け忘れてるね…

人柱はミイラと出会う:石持浅海

パラレルワールド日本を舞台に、変わった風習がテーマとなるミステリ短編集。 石持浅海らしい「狂ったロジック」が存分に味わえる短編集だった。 本格とは、議論である、がモットーなので、ベストは議論が多めの「参勤交代は知事の務め」かな。 変わった風習…

立花美樹の反逆:汀こるもの

アンチミステリを扱った長編ミステリ。 物理トリックあり、叙述トリックあり、犯人特定のロジックあり、シリーズ作品であることを生かしたトリックありと盛りだくさんな内容。 あと、そんなことより、ホモ妄想だ! っていうぐらい、キャラ萌えも出来る内容。…

ジェシカが駆け抜けた七年間について:歌野晶午

小説家であり、本格ミステリ作家である歌野晶午の長編ミステリ。 ミステリ的には、最後の一撃にのみ焦点を当てた、サプライズ重視の作品。小説的には、まさにタイトル通りの内容で、ランナーの悲哀みたいなものが感じられて面白い。 葉桜や春から夏、やがて…

壺中の天国:倉知淳

ホワイダニットに完全に焦点を当てた、本格長編ミステリ。 本格、と書いたのは、この作品が本格ミステリ大賞を受賞してからつけただけで、僕個人としては本格というよりは、犯罪を通じて社会の在り方を問うくだりが多く、社会派な作風だと感じた。 ミステリ…

先生と僕:坂木司

日常の謎を扱った短編ミステリ集。 もはや、狙っているとしか思えない、全編に漂うやおい臭。同作者の引きこもり探偵シリーズにも勝るとも劣らない、完璧なまでのBL妄想を繰り広げてしまう作品集だった。 キャラクタで萌えさせられ、カップリングでハァハァ…

平台がおまちかね:大崎梢

出版社の新人営業マンを主人公に、日常の謎を追う短編ミステリ。 ミステリのネタ自体は、小さいものが多いが、読ませるキャラクタはさすが大崎梢。 カップリング相手が豊富なので、妄想しまくりで読後感も○。 ベストは家族愛物の「絵本の神さま」。家族愛、…

Another:綾辻行人 ネタバレ有り

ホラー作家、幻想小説作家、そしてなにより新本格ミステリ作家である綾辻行人の長編本格ミステリ。 議論の量が本格としての価値だ、がモットーであり、サプライズよりロジックを表明している自分としても、これは本格だと認めざるをえない。 犯人言及のロジ…

紙魚家崩壊 九つの謎:北村薫

ミステリからホラーから小説まで幅広いジャンルをカバーする短編集。 ミステリ読みとしては、アンチミステリの極みとも言える「死と密室」、ちょっとしたパズラーの趣がある「おにぎり、ぎりぎり」あたりが良かった。 ベストは最長であり、唯一の本格ミステ…

嫉妬事件:乾くるみ

恋愛小説と本格ミステリのスレスレを行き交う作者が今度は、バカミスと本格ミステリのスレスレをうまくついた世にも珍しいウンコをあつかった作品。 バカミスと書いたが、中身はガチガチの本格ミステリで、徹底した議論が繰り広げられ、本格の面白さは議論の…

白戸修の事件簿:大倉崇裕

巻き込まれ探偵が主人公の軽犯罪が軸となった短編ミステリ集。 コメディリリーフが上手く、緊張感をもった犯罪パートとコミカルな会話劇とのバランスが絶妙に混ざり合っている。 特にテーマになっている軽犯罪(スリや万引きなど)を追っていくのは、なるほ…

田舎の刑事の動物記:滝田務雄

コミカルなキャラクタ描写が魅力の短編集。 キャラクタの掛け合いが面白く、ミステリというよりはコメディ小説として読める作品になっている。 ミステリ的なベストはシンプルなフーダニット物の田舎の刑事の闘病記。掌編として手堅くまとまっていて、ロジッ…

殺人鬼フジコの衝動:真梨幸子

殺人によって自己を表現する家系のカルマの螺旋を描く長編ミステリ小説。 作中作としての入れ子構造がミステリ的な魅力になっているが、本筋はあくまでカルマの螺旋に尽きる。 入れ子構造やループといった繰り返しの構造ではなく、少しずつでも何処かに進ん…

空を飛ぶための三つの動機:汀こるもの

ギャルゲ、エロゲ方面に詳しい人なら、空を飛ぶ、三つの方法との比較をしたくなるタイトルの長編ミステリ。*1 作中でも言及している通り、アンチミステリの趣が強いが、純粋にホワットダニットに切り掛かったミステリとして読んでも十分面白かった。 動機や…

れんげ野原のまんなかで:森谷明子

日常の謎系のミステリ短編集。日常の謎らしい、ほんわかと暖かい雰囲気の作品がそろっている。 特に気持ちが引かれたのは、四編目の「二月尽−名残の雪」。ミステリの謎解き自体は、短編ということもありコジンマリとまとまっていて、特別優れているわけでも…

春から夏、やがて冬:歌野晶午

パズラーから小説まで幅広いジャンルをカバーする歌野晶午の長編小説。 歌野晶午といえば、今や密室ゲームシリーズや葉桜などの、最後の一撃、サプライズの印象がすごく強い。帯や紹介文でも、それを意識させていたため、どんでん返しのテンプレートを最初か…

闇の喇叭:有栖川有栖 二点(五点満点)

有栖川有栖の新シリーズ第一作となる、現在とは有り様が違う日本を描く長編社会派?ミステリ。トリック自体は、ベタな物理トリックで評価がしずらい上、もう一つの人物誤認のトリックに関しても今ひとつ面白みがない。 なので、本格の文脈よりも社会派の文脈…

街の灯:北村薫

昭和初期のおひいさまたちを描く、日常の謎系短編ミステリ集。読者放り投げの暗号ミステリが痛烈な「銀座八丁」がダントツでベスト。 ここまで、読者のしったこっちゃないことを、丁寧にかつ正確に書かれたら、知らないこちらの無知をあやまりたくなるぐらい…

鷺と雪:北村薫

昭和初期の動乱の時代を描いた日常の謎系短編集。前巻にあたる、玻璃の天以上に、小説としての趣が強く、直木賞受賞もなるほどと頷ける。 それだけに、サプライズとなる大落ちが本格としては、アンフェアなのが惜しい。*1 あくまでミステリ作家であり、かつ…

貴族探偵:麻耶雄嵩

ロジック、トリック、サプライズのどれをとっても一線級の本格ミステリ短編集。 なんといっても、ベストは「こうもり」だろう。フェアプレイの精神に乗っ取ったサプライズ物としては、正解に限りなく近い出来。 それぞれの短編もロジック一辺倒や、トリック…

明日の空:貫井徳郎

三部構成の長編青春ミステリ。青春物とミステリという、お馴染みの組み合わせながら貫井らしさが出ていてる。 小説部分は重めのテーマに苦しい展開ながらも、読後感がよく読み終わった後も良い意味で気持ちを引きずられなかった。 ただ、この読後感のよさと…

デュラララ!! 2:成田良悟

ミステリではなく、キャラクターが入り混じる展開が魅力のライトノベル。 物語について思うことは何もないので、萌え萌えしているキャラクタのカップリングの話をします。門田京平×遊馬崎萌えです。 彼らのラブラブチュチュを見ていると胸がキュンキュンしま…

デュラララ!!:成田良悟

ミステリではなく、ライトノベルの長編。 群集劇とかパルプフィクションの類で、交差する物語が最終的に一点に収まるストーリーが見所。 良い意味でライトノベルらしくない、小説っぽい作品で、落ち着いた雰囲気で楽しめた。 ただ、だからといって満足できた…

卒業:東野圭吾 ネタバレあり

かの加賀恭一郎シリーズの第一長編に当たる、青春ミステリ。 小説としてはベタな青春物ながら、手堅く丁寧にまとめている。青春小説らしいできばえ。 第一の事件は知識トリックこみの物理トリックで、今読むと古臭い。しかし、第二の事件は、雪月花という聞…

四畳半神話大系:森見登美彦(ネタバレあり)

少し変わった構成の短編連作青春小説。 この連作の構成は青春小説ではお馴染みの、自分の大きさを悟るシーンと絶妙にマッチしている。 また、この構成が真面目なストーリーのためだけではなく、繰り返しのギャグとしても機能している辺り、完成度が非常に高…

温かな手:石持浅海

奇妙な正物が探偵役を勤める短編連作集。 この奇妙な生物の設定はミステリよりも小説としていかされている。 SFパズラーなノリは一切無いため拍子抜け。セリヌンティウスやBGあるいは、みたいな前提条件を利用したミステリだと思っていたから。 ベストは子豚…

完全犯罪研究部:汀こるもの

ミステリよりも青春小説の方に寄った青春ミステリ短編連作。 軽い文体に加え、パロディのギャグも大目、キャラクタもわかりやすい個性付けがされていて読みやすかった。 ミステリとしては弱すぎるが、青春小説としては面白かった。特に青春小説だからと、安…

しらみつぶしの時計:法月綸太郎

シリーズ探偵の登場しない、純粋な短編ばかりが収録されたミステリ短編集。 ベストはロジックが冴え渡る盗まれた手紙。小説であることよりも、パズルやミステリに寄った作品が多くて大満足。 法月綸太郎というと、どうしてもふたたび赤い悪夢や誰彼のような…

さよならの次にくる 新学期編: 似鳥鶏 (ネタバレあり)

青春ミステリ短編連作集の下巻。 ミステリとしては、日常の謎物ながら中々本格な謎もあり楽しめた。ベストは、春の日の不審な彼女。ハウダニットと見せかけての意外な犯人物。しかも連作であることを生かしたそれで驚いた。 小説としても、青春小説らしい晴…