ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊感想。『428の目指した所と不思議のダンジョンが目指しているであろう所』
前置き。チュンソフト全体におけるポケダン空と428の位置づけ。
428の面白さは非常にわかりやすい。
モジュール形式で語られる事件の断片、それらが一点に集中していくシナリオ、そして感動的なエンディング。
システム的な前作である街や、会社的な前作であるイマビキ草と比べると、非常に面白さがわかりやすい作品だ。
それと同じように、チュンソフト二本柱のもう一本、不思議のダンジョンシリーズの最新作「ポケモン不思議のダンジョン空の探検隊」も面白さがわかりやすい。
自己犠牲を強いられる主人公、それをただ見ていることしか出来ないパートナー、露骨に涙が出てくるもの悲しいストーリー。
シレンシリーズやトルネコシリーズと違って、シナリオの面白さが非常にわかりやすく、面白い。
もちろん、シレンシリーズのシナリオが悪いわけではない。
特にシレンGB1でのケヤキにまつわるエピソードは、ポケダンに負けず劣らず面白いシナリオだと思う。
前置きそのニ。過去作品でどうボクは感動したのか。
改めてサウンドノベルシリーズや不思議のダンジョンシリーズのシナリオを思い返してもらいたい。
特に街やシレンのような作品の。
その面白さは、よくも悪くも「やった人にしかわからない」面白さだと思う。
SFCシレンでコンドルに乗ってこばみ谷を下るシーンや
GBシレンで月影村の人々が贈る「旅の神クロンの追い風を！」の言葉や
街で花火が上がるシーンは、もちろん感動的で、非常に面白い。
けれども、この面白さを人に説明するのが難しい。
そう、SFCシレンや街の感動は
そこにたどり着くまでの過程があってこそなのだ。
「大きな鳥に乗って空を飛んだ」から感動したのではなく
何度も何度もテーブルマウンテン前後で倒れ、ガイコツ魔王や死神から逃げ続け
何とかラスボスを倒したからこそ、感動したのだし。
「村人たちに感慨深い言葉をかけられた」から感動したのではなく
村人たちを助けるために、何度も何度も供養峠を上ったり下ったりした結果
ケヤキや村人にこの言葉を投げかけられたから感動したのだし。
「息子の誕生日を祝うために花火があがった」から感動したのではなく
８人の登場人物たちの正直くどくて退屈なシナリオ*1を我慢して読んだその先に
渋谷だけでなく世界中に花火があがっていて
その花火の理由が利己的で、それでいて全く意味のない救いの無いものだからこそ
感動したのだ。
そう、少し前のチュンソフトゲームは
「過程」を読み解く、大袈裟に言ってしまえば、読書を強要する文学のような一面があったのだ。
結果に感動しているのではなく、そこまでの道程に感動したのだ。
本題。最近はやっぱり結末が重視されている。
さて、それを踏まえたうえで、ここ最近のゲーム*2を振り返りたい。
サウンドノベルなら金八以降
不思議のダンジョンならポケダン赤青以降
イマビキ草はともかくとして
かまいたちの夜×3や金八も、当然428も
「話の筋」をここに書くだけで、十分感動的なエピソードだと思う。
俊夫とみどりの子供が生まれるシーンや、桔梗が一面に広がるシーン。
神がかった沢城みゆきの演技。
どれも、過程はあくまで「タメ」であり、そこからの「結果」が面白い。
その集大成といえるのが「428」であり「空ダン*3」なのだと思う。
もちろん、428や空ダンが過程を軽視しているわけではない。
ただ、鮮烈なシナリオや過剰な悲しい表現等等の割合が増えているから
そういう傾向に寄っている、という話だ。
結論。
先ほども言ったが、428や空ダンが旧作と比べて、過程を軽視して
中身が薄っぺらな作品であるとは思わない。
けれども、過程よりも結末を重視している傾向にはあると思う。
サウンドノベルシリーズの弟切草も、不思議のダンジョンシリーズのトルネコ1も、もう17年前の作品だ。
チュンソフトは未だにこの二本のシリーズをリリースし続け
それ以外のネットサルやホームランドや金八は、中々次回作がリリースされない。
そんなチュンソフトがある意味「ゲーム性」の象徴でもある、過程重視のシナリオ展開を捨て
「物語性」を推し進めるために、結末重視のシナリオを展開しているのは
ゲーム性の中身である、システムに新しいことを取り入れようとすることを、放棄することに近づかないだろうか……
と少し不安になりつつも、やっぱり面白いシナリオのゲームというのは
多少システムに不備があっても面白いものだとも思う。*4
