2012-01-01から1年間の記事一覧

人柱はミイラと出会う:石持浅海

パラレルワールド日本を舞台に、変わった風習がテーマとなるミステリ短編集。 石持浅海らしい「狂ったロジック」が存分に味わえる短編集だった。 本格とは、議論である、がモットーなので、ベストは議論が多めの「参勤交代は知事の務め」かな。 変わった風習…

立花美樹の反逆:汀こるもの

アンチミステリを扱った長編ミステリ。 物理トリックあり、叙述トリックあり、犯人特定のロジックあり、シリーズ作品であることを生かしたトリックありと盛りだくさんな内容。 あと、そんなことより、ホモ妄想だ! っていうぐらい、キャラ萌えも出来る内容。…

ジェシカが駆け抜けた七年間について:歌野晶午

小説家であり、本格ミステリ作家である歌野晶午の長編ミステリ。 ミステリ的には、最後の一撃にのみ焦点を当てた、サプライズ重視の作品。小説的には、まさにタイトル通りの内容で、ランナーの悲哀みたいなものが感じられて面白い。 葉桜や春から夏、やがて…

壺中の天国:倉知淳

ホワイダニットに完全に焦点を当てた、本格長編ミステリ。 本格、と書いたのは、この作品が本格ミステリ大賞を受賞してからつけただけで、僕個人としては本格というよりは、犯罪を通じて社会の在り方を問うくだりが多く、社会派な作風だと感じた。 ミステリ…

先生と僕:坂木司

日常の謎を扱った短編ミステリ集。 もはや、狙っているとしか思えない、全編に漂うやおい臭。同作者の引きこもり探偵シリーズにも勝るとも劣らない、完璧なまでのBL妄想を繰り広げてしまう作品集だった。 キャラクタで萌えさせられ、カップリングでハァハァ…

平台がおまちかね:大崎梢

出版社の新人営業マンを主人公に、日常の謎を追う短編ミステリ。 ミステリのネタ自体は、小さいものが多いが、読ませるキャラクタはさすが大崎梢。 カップリング相手が豊富なので、妄想しまくりで読後感も○。 ベストは家族愛物の「絵本の神さま」。家族愛、…

Another:綾辻行人 ネタバレ有り

ホラー作家、幻想小説作家、そしてなにより新本格ミステリ作家である綾辻行人の長編本格ミステリ。 議論の量が本格としての価値だ、がモットーであり、サプライズよりロジックを表明している自分としても、これは本格だと認めざるをえない。 犯人言及のロジ…

紙魚家崩壊 九つの謎:北村薫

ミステリからホラーから小説まで幅広いジャンルをカバーする短編集。 ミステリ読みとしては、アンチミステリの極みとも言える「死と密室」、ちょっとしたパズラーの趣がある「おにぎり、ぎりぎり」あたりが良かった。 ベストは最長であり、唯一の本格ミステ…

嫉妬事件:乾くるみ

恋愛小説と本格ミステリのスレスレを行き交う作者が今度は、バカミスと本格ミステリのスレスレをうまくついた世にも珍しいウンコをあつかった作品。 バカミスと書いたが、中身はガチガチの本格ミステリで、徹底した議論が繰り広げられ、本格の面白さは議論の…

白戸修の事件簿:大倉崇裕

巻き込まれ探偵が主人公の軽犯罪が軸となった短編ミステリ集。 コメディリリーフが上手く、緊張感をもった犯罪パートとコミカルな会話劇とのバランスが絶妙に混ざり合っている。 特にテーマになっている軽犯罪(スリや万引きなど)を追っていくのは、なるほ…

田舎の刑事の動物記:滝田務雄

コミカルなキャラクタ描写が魅力の短編集。 キャラクタの掛け合いが面白く、ミステリというよりはコメディ小説として読める作品になっている。 ミステリ的なベストはシンプルなフーダニット物の田舎の刑事の闘病記。掌編として手堅くまとまっていて、ロジッ…