2010-01-01から1年間の記事一覧

貴族探偵:麻耶雄嵩

ロジック、トリック、サプライズのどれをとっても一線級の本格ミステリ短編集。 なんといっても、ベストは「こうもり」だろう。フェアプレイの精神に乗っ取ったサプライズ物としては、正解に限りなく近い出来。 それぞれの短編もロジック一辺倒や、トリック…

明日の空:貫井徳郎

三部構成の長編青春ミステリ。青春物とミステリという、お馴染みの組み合わせながら貫井らしさが出ていてる。 小説部分は重めのテーマに苦しい展開ながらも、読後感がよく読み終わった後も良い意味で気持ちを引きずられなかった。 ただ、この読後感のよさと…

デュラララ!! 2:成田良悟

ミステリではなく、キャラクターが入り混じる展開が魅力のライトノベル。 物語について思うことは何もないので、萌え萌えしているキャラクタのカップリングの話をします。門田京平×遊馬崎萌えです。 彼らのラブラブチュチュを見ていると胸がキュンキュンしま…

デュラララ!!:成田良悟

ミステリではなく、ライトノベルの長編。 群集劇とかパルプフィクションの類で、交差する物語が最終的に一点に収まるストーリーが見所。 良い意味でライトノベルらしくない、小説っぽい作品で、落ち着いた雰囲気で楽しめた。 ただ、だからといって満足できた…

卒業:東野圭吾 ネタバレあり

かの加賀恭一郎シリーズの第一長編に当たる、青春ミステリ。 小説としてはベタな青春物ながら、手堅く丁寧にまとめている。青春小説らしいできばえ。 第一の事件は知識トリックこみの物理トリックで、今読むと古臭い。しかし、第二の事件は、雪月花という聞…

四畳半神話大系:森見登美彦(ネタバレあり)

少し変わった構成の短編連作青春小説。 この連作の構成は青春小説ではお馴染みの、自分の大きさを悟るシーンと絶妙にマッチしている。 また、この構成が真面目なストーリーのためだけではなく、繰り返しのギャグとしても機能している辺り、完成度が非常に高…

温かな手:石持浅海

奇妙な正物が探偵役を勤める短編連作集。 この奇妙な生物の設定はミステリよりも小説としていかされている。 SFパズラーなノリは一切無いため拍子抜け。セリヌンティウスやBGあるいは、みたいな前提条件を利用したミステリだと思っていたから。 ベストは子豚…

完全犯罪研究部:汀こるもの

ミステリよりも青春小説の方に寄った青春ミステリ短編連作。 軽い文体に加え、パロディのギャグも大目、キャラクタもわかりやすい個性付けがされていて読みやすかった。 ミステリとしては弱すぎるが、青春小説としては面白かった。特に青春小説だからと、安…

しらみつぶしの時計:法月綸太郎

シリーズ探偵の登場しない、純粋な短編ばかりが収録されたミステリ短編集。 ベストはロジックが冴え渡る盗まれた手紙。小説であることよりも、パズルやミステリに寄った作品が多くて大満足。 法月綸太郎というと、どうしてもふたたび赤い悪夢や誰彼のような…

さよならの次にくる 新学期編: 似鳥鶏 (ネタバレあり)

青春ミステリ短編連作集の下巻。 ミステリとしては、日常の謎物ながら中々本格な謎もあり楽しめた。ベストは、春の日の不審な彼女。ハウダニットと見せかけての意外な犯人物。しかも連作であることを生かしたそれで驚いた。 小説としても、青春小説らしい晴…

万能鑑定士Qの事件簿 Ⅱ*1:松岡圭祐

エンタメ長編小説の下巻。ミステリよりはサスペンスやキャラクタに寄っている。 小説としては深いテーマもあり、社会派の様相も見せるのだが、いかんせん解釈を読者に放り投げてる感がある。 そこらへんのテーマなり物語なりに文量をかけてくれれば、軽い文…

てるてるあした:加納朋子

日常の謎物ミステリでもあって前作とは打って変わって、直球ど真ん中の短編連作小説。 幾度と無く書いてきているが、ボクは本当に家族物に弱い。その中でも今作は、限りなく満点に近いぐらいの大満足だった。 父息子物の最高峰が貫井徳郎の追憶のかけらなら…

探偵小説のためのゴシック「火剋金」:古野まほろ

ロジックが冴え渡る本格ミステリのシリーズ第五長編にして完結編。 ミステリ部分を褒め称えたいのは、当然として小説パートがさすが完結編だけあって、面白かった。 別シリーズとのリンクなのか、次回作への伏線なのかがわからなかったせいで、ラストはおい…

よくわかる現代魔法 5 TMTOWTDI たったひとつじゃない冴えたやりかた:桜坂洋

アニメ化もされたりで大人気なライトノベル長編。 今作は第一部の完結ということで、話の筋も盛り上がり、キャラクタたちのストーリーも一応の結末を迎えている。 物語として楽しめたかどうかはおいといて、キャラ立ちを狙うためわかりやすい属性をつけよう…

万能鑑定士Qの事件簿 I*2:松岡圭祐

長編ミステリ、というよりはエンタメの上巻。 力士シールをめぐるメインストーリーに、過去や未来のシーンがカットバックしてくる構成はキャラクタの魅力とあいまって効果的に作用している。 ただ、あまりにもエンタメしすぎていて小説としては今一つ厚みに…

さよならの次にくる〈卒業式編〉:似鳥鶏

青春ミステリのシリーズ第二作目にあたる、短編連作の上巻。 日常の謎の学園物で、富士見ミステリ文庫で出ていたら歴史が変わっていたかもしれないぐらい、キャラクタは魅力的だった。 物理トリックをしっかり組んでいる所や、安楽椅子探偵ではなくて調査の…

密室殺人ゲーム2.0:歌野晶午

本格ミステリ最大の魅力「議論」を徹底的に追求したシリーズの、第二短編集。 ちょっと今回は拍子抜け。本格度も確かに高いのだけれど、サプライズに力を入れすぎじゃないかな。 歌野作品でいうと「有罪としての不在」のような、ロジックとサプライズの織り…

密室殺人ゲーム王手飛車取り:歌野晶午

殺人ゲーム、と銘打たれた殺人事件を推理しあう短編連作本格ミステリ。 自分にとって”本格”ミステリとしてもっとも重要だと思っているのが、議論である。 たとえトリック自体がバカミス的であったり、小説性が薄くパズル本のようになっていても、そこに至る…

アクアリウムwithクロック 攻略?日記

はじめに 四月から社会人をやっているので、先日初任給が出ました。 母親や祖父祖母をはじめお世話になっている人にお礼をし、家賃と食費を母親に渡し、 その上で何に使おうかなあ、と悩み前から気になっていたDSiLLを買うことに。 つまり、コロぱたプレイ日…

ミステリなふたり:太田忠司

安楽椅子探偵+刑事というオーソドックスなスタイルの短編ミステリ。 知識トリックや、地続きではない説明不足なロジックなど、僕が望む本格とは違った展開が多かった。 実際にそのロジックが穴の無い完璧な物であるか? が大事なんじゃなくて、その穴を潰そ…

キリオン・スレイの生活と推理:都筑道夫

奇妙な謎が、ほんの少し見方を変えるだけで理解できる。という短編ミステリの典型的な面白さが存分に発揮された短編集。 都筑ミステリではお馴染みのシモネタがオチに使われる展開と、タイトルであり解かれるべき謎が魅力的な『なぜ幽霊は朝飯を食ったのか』…

探偵小説のためのインヴェンション「金剋木」:古野まほろ

独自ルールを元にしたロジックが見所の長編本格ミステリ。 今回もロジックに関しては確かに優れている。今まで比べて、少々議論に欠けているけど自明のルールが基盤にあるから仕方ないかな。 それにしてもやっぱり、小説としての成立感が綱渡りすぎる。恋愛…

探偵小説のためのノスタルジア「木剋土」:古野まほろ

パズラーとしての高みを目指し続ける本格ミステリシリーズの第三長編。 今作もロジックによるフーダニット一本勝負。徹底的に地上戦を挑むねちっこい議論は、まさに本格。 けどこの作風は、どこまでいってもクイズやパズルの領域を超えれないんじゃないかな…

繭の夏:佐々木俊介

スリーピングマーダーと青春小説のあわせ技が見事な長編ミステリ。 海外物にめっぽう弱いため「スリーピングマーダー」というジャンルをはじめて知った。類例もぱっと思い浮かばない。貫井の追憶のかけらかなあ。*1 小説としては上手にはまっているが、ミス…

よくわかる現代魔法 4 jini使い:桜坂洋

ミステリではなくライトノベルのシリーズ第四長編。 四行「ミステリ」感想と題しているのに、どうしてミステリじゃない作品も扱うの? とか、そもそもなんで四行? みたいな疑問もあるかもしれません。 まず最初のミステリ、非ミステリの話に関しては、その…

よくわかる現代魔法 3ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ:桜坂洋

ミステリではなくライトノベルのシリーズ第三長編。 今回はタイムトラベル物だが、そういったところの面白みよりもシリーズとしての伏線やキャラ萌えがほとんどだった。 弓子の啖呵を切るシーンなど、印象に残る文章は多かったか、ストーリー自体の印象は薄…

ルームメイト:今邑彩

一時ムーブメントとなった多重人格をテーマにした長編ミステリ。 オチとして使われる多重人格ネタは面白くないけど、この作品のように小説するためや、前振りとして使う分にはかまわないな。 さて、今作のミステリ的な題材はおそらく意外な犯人物なのだろう…

千年樹:荻原浩

ミステリではなく、同じ樹をテーマにすえた短編連作集。 だいたい、ミステリではないって前置きをしながらも、ミステリらしさを語るのが定番なんだけど、今回は本当に真っ当な小説。 どの短編も過去と未来の二本立てで、それらが連作の中で過去と未来が時を…

ルーガルー:京極夏彦

姑獲鳥の夏リファイン。と言うのは大げさかもしれないが、テーマ的にも設定的にもメインシリーズと地続きにある長編小説。 特に人が人を殺す理由についての議論は、京極堂シリーズから強く引き継がかれており、世界観設定とあいまって議論が一歩も二歩も先に…

よくわかる現代魔法 2 ガーベージコレクター:桜坂洋

ミステリ、ではなくてライトノベルのシリーズ第二長編。最近、創元のアンソロジーに名前を見かけるなど、ミステリ畑にも進出してきそうなので、読んだ。*1キャラクタ小説らしく、きっちりキャラクタの魅力は伝わってきた。特に二巻の主人公である美鎖は、ボ…