CANAAN 上下 :杉原智則

チュンソフトの428を原作とした後日談CANAAN、のノベライズ。という何だかヤヤコシイ位置にいる作品。
アニメ版CANAANで言葉足らずだった『「428」と「CANAAN」でマリアはどう変化したのか?』というのが、地の文でしっかりと描写されており、428の主役はマリアだと思っている僕には大満足の出来。

428では”確固たる自分”を持つカナンと”確固たる自分”を持たないマリアだからこそ恋人になれる。という展開で。
CANAANノベライズではそれを踏まえたうえで
カナンの人間的な成長と、それを支えきれないマリアの心情をしっかりと言葉にしてくれている。


そして、カナンが人間的に成長したからこそ色に頼らず、そして何より自分を過剰に信仰しない。
という説明のおかげで、アニメ版ではよくわからなかった、色を失ったエピソードの意味がしっかりと理解できた。

だが、お互いに溶けあい、依存してしまっては、いまの大沢マリアではカナンを駄目にしてしまうだけだった。寄りかかろうとするカナンを、一個の人間として支えてやれるほどに、いまのマリアは強くない。


あくまでマリアはカナンと対等な関係でいたい、依存しあったり、一方的に頼りたくない。
これは妹のひとみも亜智と対等な関係でいたがっていたのと、似通っていて非常に面白い。


そして、428から続くテーマの「憎しみの連鎖」もしっかりと、描いていて
CANAANはもちろん、翻って428をもっと好きになれた。
アニメ版ではどうにもなじめなかった、ハッコーやサンタナ、リャンチーやカミングスも
428の世界に住んでいるんだろう、とすんなり納得させられた。


特に、コミカライズの方にはどうもハッコーとサンタナが登場していないので、
このノベライズで彼らのことを好きになれて、本当によかったと思う。


あと、カナンマリアが好きすぎて忘れてたけど
ミノさんもいいね。ミノさんもまた、撃たないことで確固たる自分を持つってのが、
あの428のときに活躍したジャックや縦野や加納やアチたちと被る。


428ではアルファルドとの因縁や、家族を守るために戦ったけど、ミノさん以外のみんなは
「自分」や「大切な他人」の命がかかった極限状態でも、相手を撃たないってのが
「憎しみの連鎖」をとめるっていうテーマに繋がってた。


ミノさんもようやく、428のテーマに触れれることが出来たんだなあ、と感慨深い。
「許すこと」「信じること」を見失わないミノさんは、やっぱりミノさんらしかったしね。


アニメ版であった「記者辞めようかな」っていう衝撃の告白がカットされたから、
もし次のチュンソフト×北島ゲーで登場したとき、記者やってたら小説版CANAANが正史になるのかなあw




さて、これで428のメディア展開も残すはコミカライズの完結とブルーレイorDVDの完結を待つばかり。
428自身もwiiのおすすめセレクションに選ばれたりと、ユーザー数はこれからも増えそう。
是非、428をプレイしたら正当な続編であるCANAANにも触れてほしいね。