模造人格:北川歩実

二転三転、というよりは七転八倒な感じの長編サスペンス。思わず「いいから人の話きけよ!」とか「いやだから、どっちも証拠ないだろ!?」とツッコミたくなるぐらい、議論が議論になっていなかった。
ここ最近「本格度合いとは議論の量の多寡である」みたいなことを提唱しているけれど、さすがにこういう内容の一切無い議論だけで600Pも読むのは苦痛。
もう少しロジックというか「本格魂」みたいなものを踏まえたうえでの、議論なら大歓迎だけど。ここまで水掛け論を延々と繰り返されるのは、しんどい。
ただ、小説として読むと親子愛、特に母娘物や父息子物だとほぼ無条件に泣いてしまう性質なので、大満足。ちなみに僕の家族愛物のベストは貫井の追憶のかけら。