殺人鬼フジコの衝動:真梨幸子

殺人によって自己を表現する家系のカルマの螺旋を描く長編ミステリ小説。
作中作としての入れ子構造がミステリ的な魅力になっているが、本筋はあくまでカルマの螺旋に尽きる。
入れ子構造やループといった繰り返しの構造ではなく、少しずつでも何処かに進んでいく螺旋を描いている点が、小説的魅力に繋がっていて好印象。
ただ、作中で過剰に描かれる人間の毒気にあててられてしてまった。けれど、ここまで厳しい世界を描かないと、人間の業というものは描けなかったのだろう。