スパイラル〜推理の絆〜 名探偵の苦悩に対する解答

後期クイーン問題に対する解答は、西澤の完全無欠の名探偵、山田正紀神曲法廷、などどれも名探偵を超える存在が登場する。
黒い仏とか神様ゲームとか)


※この文章のコメントに氷川透という単語を入れないでください。


そして、もちろんスパイラルにも名探偵を超える存在「神」が登場する。

名探偵と神

後期クイーン問題を扱う場合「名探偵の掲げる論理は絶対ではない」という内容を下敷きにしている。
推理が論理的に出来ないのであれば、絶対性を持った存在をぶち込んで見よう。
というのが、真実を見通す目を持った神の導入までの経緯だと思う。
神を導入せず、名探偵の絶対性を疑うだけで終わってしまうと城平の名探偵に薔薇を、米澤の小市民シリーズのようになる。
こうなると、舞城王太郎が殺害したようなジャンルになってしまう。


神>(越えられない壁)>名探偵
という図式を用いることにより、名探偵の苦悩を神様に投げつけたのだ。
ただ、これは
名探偵>(越えられない壁)>ワトソン
と、何ら変わりないのではないだろうか?
(名探偵木更津悠也は難しいから、とりあえず放棄)


つまり、このままでは「神様の苦悩」という問題が生まれるのではないか?

散文的に時には詩的に オートマトンじゃなく人に進化して 断絶の祈りの果てに

後期クイーン問題、というか、偽の証言問題は別段ミステリだけの問題ではない。
恋愛物でよくある展開の一つである。
「浮気なんてしてないよ、信用してくれ」
「でも、ホテルに入っていく写真……」
「これは、妹だよ。妹との近親相姦ぐらいいいじゃないか?」
「そっか、妹さんなんだ、じゃあしょうがないよね」


という展開だって、ミステリが抱える偽の証言問題に触れている。
だから僕がエロゲの内容を語っても、特に問題はないわけだ。
(「神の苦悩」というジャンルが思いつかなかっただけっす、誰か教えて)


さて、元長の「未来にキスを」では、偽の証言を見破れるメタ能力者が登場する。
これは、神様ゲームに登場する神と何ら代わりない、いわゆる神である。
(そういうことにしといて、無理あるって自分でわかってるから)


さて、神は悩み方やそこまでにいたるプロセスは、本編をやってもらうとして。
解決法は「目をつぶって、自分の世界に引きこもる」という物でした。
エヴァTV版の展開をより、強調した物になっている、結論です。
エヴァがただの人間が行ったのに大して、未キスでは神が行うのですから)


というわけで、神様は共感してくれる人や、自分の理想を超えてこない回りに絶望して、
目を閉じ、口を閉じ、耳を閉じ、引きこもってしまいましたとさ。
スタンドアローンコンプレックスが発症する問題については放棄。
 だって難しいんだもん)

じゃあ、どうすればよかったんだよ!

名探偵の苦悩を神様に投げてしまっても、こんどは神様が苦悩してしまった。
超神、を出しても、その連鎖は止まらないわけで。
じゃあ、後期クイーン問題を、僕たちパズラーはどうすればいいんだ?


「突然現れた神様だとか
 救世主とかに救ってもらおう
 なんてお手軽な発想が
 そもそも不健全なんだ」
 

「実は造物主も
 不完全で
 うまく作ったはずの
 世界が壊れていくのを
 必死で止めようとしてるん
 じゃないか?」

そう、スパイラルでは絶対の神を否定するのです。
じゃあ、絶対性のない論理しか残されていない名探偵はどうするのか?


「ただそれが正しい
 ことを願い」
「不確かな地面で
 懸命に立ってみせて
 いるだけだ」

とどのつまり「正解だといいなあ」と祈るだけなのです。
ですが、その祈りは、結局神の助けを願う「名探偵に薔薇を」と、後期クイーン問題の最初と同じなのではないか?


「自分を
 救えるのは」
「自分だけだぞ」

そう、スパイラルの祈りの対象は自分なのです。

結論

スパイラルで、最後に名探偵が掲げる論理は、神が過去に掲げた論理と同一の物でした。
つまり、結局、名探偵は神の手のひらの上に居ただけだった。
と、解釈するのには勇み足です。


なぜなら、神はその論理を最後には手放してしまうからです。
その理由は本編では語られないので、想像ですが。
神ゆえに、他人に対して絶望したゆえに、
他人(ブレチル)が自分を信じて祈ることを、信じられなかった。


それに対して、名探偵は自分が自分を信じて祈って見せることで、他人(ブレチル)が自分を信じて祈ることによる救い、信じさせた。
名探偵は神の手のひらの上にいたからこそ、神を倒せたのです。


神も名探偵も、ワトソンも、依頼人も、みな苦悩する。
むしろ、苦悩しなければ、物語が生まれない。
けれども、その苦悩を自分の上位の存在にぶつけるのをやめよう。
自分の問題は自分で解決しよう。



パズラーとしてのミステリが不可能だと、ゲーデルやヴェトゲンシュタインが言ってても
とりあえず、自分を信じて書き続けよう。


負けるな名探偵たち。
君たちの戦いは今、はじまったばかりなのだから。


「オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな
 この果てしなく遠いミステリ坂をよ…」

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