これから

ゲームミステリをやろうかと思う。
スパイラルとか福本伸行みたいなのじゃなくて、クラインの壺みたいなの。
チョーモンインじゃなくて、トリスタみたいなの。


という発想で、なんともなしにキーボードをたたいてみた。




「ラウンド、ワン、スタート」
 ゲーム開始の合図と共に、笑止のキャラが飛び道具を放つ。
「罵倒券!」
 私はモーションを見てから、斜め下にレバーを倒す。このキャラの飛び道具は多段ヒットするので、レバーを倒し続ける。相手が飛び上がったのを確認し、ガード方向を真横に変える。ジャンプ攻撃はしゃがみガードが出来ないからだ。ところが。
「しまった、空ジャンプ」
 彼はジャンプ攻撃を行わずに、着地、そのまま下段技。
 それをなすすべもなく食らい、飛ばされ、六割もの体力を持っていかれる。
「真罵倒券!」
 ダウンから起き上がる際に、特大の飛び道具を重ねられる。無敵時間のある技で抜けることを一瞬頭を過ぎるが、彼の固めは完璧だった。ガードしながらもじょじょに削られていく体力。まずい、ガードに集中するあまり、ガードの上から攻撃を加える投げ技に注意を払うのを忘れていた!
 相手のコマンド投げを食らい、残り体力は一ドット。これが最後の起き上がりの攻防になる。彼はゲージをキャンセルに回すために、起き上がりにはゲージを使わない普通の罵倒券を重ねる。私はそれをガードする、壁を背負っているため表裏のガード方向を気にしなくてもいい。だが、この飛び道具の当たりが消えたとき、投げかそれとも攻撃か。中段と下段は見えるが、投げはガードに意識が集中するとよけられない。ええい、ままよ! 私は投げを避けるために、ジャンプをするが。
「ユー、ルーズ」
 彼のキャラも飛び上がっており、中パンチ、という名のチョップを食らい私は負けてしまった。
「ず、ずるいです! 多段の波動があるのにコマンド投げもあるなんて反則です!
 大体、いまどき投げ抜けもなければ、投げミスモーションもないなんて、当て投げが強すぎます!
 さっきの絶対、コマンド投げが成立しなかったから、ジャンプPが出ただけじゃないですか!」




……面白くないな。
大体、格闘ゲームを完璧な論理とCPUのごとき超反応で書いても面白くない。
表裏中下投げの五択を読み合うのに「ホバーの音が短い! 表の中段かすかして下段、どっちだ、どうする、どうする俺、どうすんの!」見たいな葛藤を長々と書いてもリアリティに欠けるしなあ。


とは言うものの何気なしにキャラ設定だけ先に作ったからどうしようなあ。
もったいなあ。


主人公
 置物をこよなく愛する少年。
 のわりに、固めの精度は緩い。
 単純なチェーンからのキャンセル必殺技すら失敗するため、攻めは持続しない。
 最近は画面に残れば置物なんだ、という意識改革がなされ、彼の中では波動すら置物扱いである。


主人公の持ちキャラ
 申し訳程度の波動と、申し訳程度の昇竜を持つ。
 スパコンはチェーンからの確定がないほど前振りの長い乱舞に、出は早いが無敵がないためリバサに使うと相打ちにしかならない単発技。
 また、置物(と主人公が言い張っている)として、ダメージのない煙を張れる。
 これにより、物理的に見えない中下や表裏を仕掛けられる、のだが主人公のプレイヤー性能により、この要素はほとんど有効利用されない。
 ダウンを取れる技をキャンセルして煙を張るわけだが、主人公はいつもキャンセルが遅れてしまい、煙を張っている間に相手はもう起き上がっている、というパターンが多い。
 と必殺技は散々だが、通常技は対空の中P、威力が高いレバー入れ大K、多段のジャンプ攻撃と必要なものが大体揃っている。
 ゲージの有無を問わず画面端からなら五割は堅い。
 のだが、運びに使うコンボが1フレームキャンセルな為、主人公のへちゃらかプレイヤー性能では中央から端へすら運べない。
 攻撃を持続させることや、返すことが苦手なため、一回一回のコンボで最大ダメージをちゃんと出して生きたい。
 やることは少ない。


ライバル
 多段をこよなく愛する少年。
 小足の速さと、多段ヒットする攻撃があるキャラを好んで使う。
 固めるのが大好きである。
 石膏プレイというSMプレイでもやればいいと思う。


ライバルの持ちキャラ。
 出も早い上に多段ヒットの波動がメイン武装
 空中に置いたり、逃げながら撃てたりと万能な飛び道具。
 その他の必殺技も多段、ゲージの回収率という面ではゲームでトップクラス。
 ただ、対空はない、無敵はない、ジャンプ攻撃はどれも性能が悪い、とその他の面は散々。
 特に飛び込めないのがライバル君には気に食わない様子。
 キャラ性能では防御面が散々だが、プレイヤー性能でそれを補っている。
 特に彼のもっとも得意とする、ヒット確信は絶大的である。
 彼がヒットした! と思うだけで、特に当たる要素はない牽制ですら何故か当たってしまう。
 なお、このキャラは彼の外見からすると、おおよそ選択するのが躊躇われる。
 回りくどいが、ロリロリキャラである。
 それも、ダイヤ的には下位の部類に当たる為、ゲーセンでプレイすると、いろんな意味で注目を浴びる。
 なお、上記のサンプルでは、コマンド投げを持っているが、現在のバージョンではもっていない。
 というか、正直それは強すぎるだろ。



ヒロイン
 絶大的なプレイヤー性能で他者を圧倒する、コマンド投げ命な少女。
 心の底からコマンド投げを愛し、バキュームフェラは新手の投げ技だと思っているいたいけな少女。
 加速装置を使っているかのような、完璧なヒット確認が自慢。
 ただ、今仲間内で流行っている格ゲーにコマンド投げを持つキャラは存在しない。


ヒロインの持ちキャラ
 無敵がてんこ盛りの昇竜が売り。
 だが、プレイヤーの信念により、リバサとしては使われない。
 宝の持ち腐れである。
 発生の速い中段による揺さぶりが基本的な立ち回り。
 だが、ゲージを絡めたコンボは、端でも中央でも壁を背負おうとも、どこからでも八割方持っていく。
 ゲージが二本あれば、回収率の高さも相まって即死である。
 ただ、このコンボはキャラによって構成が大きく変わってしまう。
 その為、プレイヤー性能の高い彼女でも、今だ主人公とライバルのキャラにしか安定してコンボを出せない。


ヒロインの恋人
 チキン野郎。
 待ち男。


ヒロインの恋人の持ちキャラ
 待ちが悪いとは言わないが、典型的な待ちキャラ。
 なわけでもないのに、彼は待つ。
 まともな対空がないのに待ってしまう彼の口癖は「一番強い滞空は地上ガードだ」である。
 キャラを変えればいいだけなのだが、彼はこの巨乳むちむちぽんぽんが好きなのだ。
 愛である。
 飛び道具の使い勝手はいまいち、無敵もない、対空なんて聞いたこともないこのキャラで待つ彼はある意味英雄である。
 プレイヤー性能は低く、特に表裏の揺さぶりに弱い。
 なのだが、キャラ性能は高い。
 何故なら、このキャラは次のバージョンでの改変がほとんど約束された、駄目キャラなのだ。
 少しディレイを欠けるだけのお手軽コンボが補正の関係のバグで、即死なのだ。
 小足が当たるだけで即死である。
 それでも、彼が使うこのキャラはそんな殺伐としたゲーセンに一輪の花となる、むちむちぽんぽんなのだ。
 なのだー。
 
 


うん、駄目だね。