鮎川哲也:モーツァルトの子守歌 五点(五点満点)

安楽椅子探偵物の短編集。
シリーズ第一集の頃と比べると、小説やサスペンスの部分が剃り落とされており、より鮮麗されたミステリになっている。
特に短編でありながら推理クイズではなく、あくまでミステリとしての体裁を保っていられるのは、トリックよりもそのロジックや手がかりを見出す意外性に焦点が当たっているからだろう。
サスペンスや叙述トリックや小説をやるのも結構だが、ミステリの根底にあるべきものが何なのか、それを思い出させてくれる作品。