忌火起草解明編感想。『ノベルゲームにおける難易度』

かまいたちの夜2は非常に評判の悪い作品である。
その評価の低さの一つに
「メインシナリオ(ミステリパート)が推理をする必要なく、クリアできる」
というものがある。


文章スキップなどが無いため、総当りをするのが面倒くさく推理を”実質”強要するSFC版と比べて
フローチャートシステムのおかげで、難なく選択肢を変更できる2は難易度が遥かに簡単である。
犯人入力も、夜2では不正解ならもう一度出来ると至れり尽くせりだ。*1


だけれども、今SFC版をプレイすると
文章スキップがないため同じ文章を読まないといけないし
フローチャートがないから選択肢の影響がわかりづらいと
ゲーム的には楽しいのだろうけれど、物語を楽しむという点では、当然2より劣っている。
その物語の質はおいといてね。


そう、フローチャートというあまりにも便利な道具は
街のように「入り組んだフラグシステム」がないと、ただ単に難易度を下げてしまい
ゲーム性を無くしてしまう、諸刃の剣なのだ!
では、選択肢を選ぶことがゲームにならないのであれば、サウンドノベルはどうゲームしたらいいのであろう?


という問いの答えが「夜×3」には、二つ用意されている。


まず一つ目が「複数主人公」による「入り組んだフラグシステム」。
これは、街と同じ手法で、特出するべきポイントではない。
ないが、かまいたちというクローズドサークルでの「複数主人公」は、
同じ文章が大量になってしまい、イマイチな出来だった。


そして二つ目が「総当りでは打開できないトリック入力」だった。
これは、かまいたちのミステリー部分を旨くゲームに落とし込んだ良いシステムだったと思う。
思うが、それ自体はいわゆるADVの時代にあったもので「サウンドノベルらしさ」は感じられなかった。


さて、今回の忌火起草はその点をどう解消したのだろう?


答えは
「クライマックスではフローチャートを使わせない」
「フラグが立っていない所へ飛べない」
「不可逆選択肢や時間制限付き選択肢」
というものだった。


まず最初の「クライマックスではフローチャートを使わせない」というのは、
確かに物語に緊張感が出て
不可逆選択肢や、制限時間付き選択肢との兼ね合いで旨くホラー感を演出出来ていたと思う。


だけれども、そうするのであれば、バッドエンド埋めを強制するシステムは、止めておくべきだと感じた。
自分はあまり躓かずどのシナリオも、一つ二つのバッドエンドのみで
ほとんどバッドを踏まずにトゥルーエンドにたどり着けた。


問題は、その後でピンクの栞や金の栞を開放しないと読めないシナリオがあるせいで
バッドエンドふみを強要されるのだ。


このシステム自体は、それこそかまいたちの夜の時代からある伝統的な物だけれど、今回ばかりは
フローーチャートが使えないせいで面倒くさくてしょうがなかった。


トゥルーエンドにたどり着けたら、クライマックスでのフローチャートを開放してもよかったのではないだろうか?
もしくは、金の栞自体がご褒美で、そこに新規シナリオが無ければ「やりたい人はやる」となって、バランスがよかったと思う。
もちろん、新規シナリオだって「やりたい人はやる」なのだけれど、
さすがにサウンドノベルでシナリオがあったら踏みたくなるのは当然なのだから
そこにはストレスを感じさせないで欲しかった。


ただ、攻略を見ながらやった紫以降のシナリオでは、ストレスを感じなかったため、
バッドエンド埋めを優先しつつやるプレイスタイルの人なら、文句無く楽しめるだろう。


次に「フラグが立っていない所へ飛べない」というシステムは
なるほどと頷けるもので、脳内並行世界というシナリオ自体との相性もよく満足できた。
それほど、シナリオ間を行き来するような必要がなかったのも満足できた要因だろう。


最後の「不可逆選択肢や時間制限付き選択肢」はノベルゲとしては、思いつく範疇だなあ、という印象しか受けなかった。
もう少し遊びの要素があれば、別だったかもしれない。


というわけで、かまいたちの夜×3があまり上手いフローチャートへの解答をもってこれなかったのに対して
上手く難易度とストレスの調整をした忌火起草
ボイスの導入や、実写だけれども顔の全部を見せない一枚絵といい
システム面に関しては非常に良く出来た作品だと感じた。


シナリオに関しては思うことはありません。
428や金八のシナリオがあれだけ面白かったのだから、という予断を打ち砕くすばらしい出来ですね。

*1:特定の言葉によるバッドエンドは除く