ボトルネック:米澤穂信

SF設定を基に描かれる青春長編小説。夏季限定を読んだときに、米澤穂信という作家はいつかミステリではなく文芸畑で活躍するんだろうなあ、と漠然と想像していた。まさにこれは「青春小説」であり「小説」だ。
ミステリ要素もいくつかあるが、どれも本格や社会派のためのミステリではなくて、小説のためのミステリ要素として鮮麗されている。SF的ガジェットが小説のために存在している。
青春小説として抜群に面白くて、非常に興味深い内容だった。あまり感情移入する性質ではないのだけれど、これはさすがにクロスチャンネルをクリアしたときぐらいには痛かった。*1
この”ミステリ”としての土台を持ちながらも、あっさりとミステリを捨てられるのが、新本格作家やそれに殉ずる作家と新鋭との差なんだろうなあ。さすがポスト北村薫である。

*1:久しぶりにエロゲオタっぽいことを言った気がする