玻璃の天:北村薫

日常の謎を扱ったミステリ短編集、というよりは昭和初期を舞台にした『小説』の趣が強い。
もうこれでもか! ってぐらい真っ当な小説でミステリ要素は非常に薄い。ただ、その小説部分がいわゆる「考えさせられるストーリー」で、お腹一杯。
けれどもやっぱり北村薫には「六の宮の姫君」のような、小説部分とミステリ部分を融合させる、ミステリとしての手腕に期待してしまう。
前編に当たる街の灯の方は、案外ミステリしていたのだけれど、今作はシリーズキャラクタにスポットライトを当てた関係上しかたないのかなあ。