ソロモンの犬:道尾秀介

どうして犬が走り出したのか? というホアワイダニットに焦点をおいた青春ミステリ長編。ではなく、普通の青春長編小説。
これをミステリと評するのはさすがに難しい。「話し合おう」といっておきながら、過去の回想ばかりでまったく議論をしない点や、読者に向けた叙述トリックばかりで肝心のホワイダニットは知識トリックな点が評価できない理由。
特に作品のキモであるホワイダニットがそれでは、ただの意外な展開のテンプレートにすぎない。叙述トリックも、片目の猿のように小説的テーマと合致させたり、もっと工夫のしようがあったんじゃないだろうか。これじゃあ、折原一の短編みたいな叙述トリックのための叙述トリックだよ。
ミステリとしては評価できないし、小説としてもよくある青春小説で、もう少し捻りが欲しかった。文章で読ませる貫井や石持が書いていたら又違った印象だったかも。凡作。