れんげ野原のまんなかで:森谷明子

日常の謎系のミステリ短編集。日常の謎らしい、ほんわかと暖かい雰囲気の作品がそろっている。
特に気持ちが引かれたのは、四編目の「二月尽−名残の雪」。ミステリの謎解き自体は、短編ということもありコジンマリとまとまっていて、特別優れているわけでもない。けれど、昭和初期を回想するという舞台を旨く調理していて、好感が持てた。
難点をあげるなら、どの作品も論理のアクロバティックさが足りない。かなり予定調和の謎解きばかりで、ロジックを飛躍させていない作品ばかりだった。
とはいえ、そこを楽しむのではなく、小説的な趣や、図書館という魅力的な舞台を書ききった所は非常に評価できる。