スパイラル考察の補足

幸せな探偵たち

後期クイーン問題が、問題として成り立っている、もっとも大きな理由は
「名探偵は正解にたどり着かなければいかない」という鉄則だろう。
スパイラルで歩は正しい論理を信じなければブレチルが死んでしまうし
*1



だが、ミステリというのは広いジャンルなので、名探偵の苦悩を簡単に乗り越えてしまっている作品が存在する。
それが、所謂無責任探偵だ。
(いやまあ、今思いついた考えだけどね)


例えば、北村薫の私シリーズでは、別に推理が間違っていても世界が滅びるわけではない。
ところが、東川の密室に向かって撃てでは、推理が間違っていれば、主人公が捕まってしまう。


つまり、探偵役に責任が生じなければ「正しい解答」を出す必要がないのだから
気楽に推理できる、ということだ。
(このゲーム感覚の指摘は米澤が夏季限定で上手くやってくれたので、書かない)


もちろん、この無責任探偵も一歩間違えば、エラリークイーンや法月綸太郎のように苦悩に落ちてしまう。
だが、そこはそれ、作家がそうしないし、そうする気配もないのだから、いいのだろう。
(皆が皆法月や氷川みたいになったら嫌だよね、ってことが言いたい)


というわけで、今日は物語に正解を要求されない幸せな探偵どもについてのお話だよ。

パスワードシリーズとタック&タカチシリーズ。

赤信号みんなで渡れば怖くない
赤、という辺りに法月、ひいてははやみねの匂いを張りつつ、お話は展開する。


無責任探偵どもも、悩んでしまう可能性があるわけですが、それを回避するために、彼らは群れることを覚えます。
古くはアジモフ黒後家蜘蛛の会なんて名作もあります。
そう、彼らは群れることで責任が軽くなったように勘違いしてやがるのですよ。


というわけで、現代の黒後家と名高いパスワードシリーズの話。
(誰が名を高い高いしてあげてるかは、知らない)
(喧嘩ごしなのは、きのせい)

それはシリーズキャラの宿命。

「舞城、貴様がやったことは殺しなんかじゃない、ただのゴミ箱に捨てただけなんだ。
 現状を見るんだ、消えてなんか居ない。
 やつらは、まだ生きてるんだ!
 だから、責任をとれよ!
 てめえがやんなきゃ、誰がやんだよ!!!」
   民明書房刊「錆びついた論理で苦悩を撃ち抜こう」第356話「舞城の帰還」より


タック&タカチシリーズが、スコッチゲームと依存を経て「青春小説」というジャンルを獲得したように。
無責任探偵たちにも苦悩が待ち受けていました。


それと同じように、パスワードシリーズにも苦悩が……
そうえば僕、春夏秋冬以降のパスワードシリーズ積んでるんだ。
だから、崩してから続きを書くね。


BGMがトゥルーラブストーリーの恋のように僕たち、になって涙でモニタが見えないから
とかそんな理由で筆をおくわけじゃないよ。

おまけ

「妹さん、まだ生後半月もたってないのは気のせい?」
「んーと、ほらあれ、そう、もう一人いるの、あれ、あれと一緒に行ったの」
「でもあの子、僕って言ってるよ」
「僕っ子なんだよ」
「学ラン着てるけど?」
「男装好きなんだよ」
「男子トイレに入っていったよ」
「オレ、両刃使いなんだ」

*1:死んだっていいじゃん、ひよのと幸せに暮らそうよ。なんて考えは、AIRクラナドが否定している。ということにしとこうぜ。