ハードボイルドと名探偵の苦悩に違いを

前回の続き
ハードボイルドと名探偵の苦悩に見た目で差をつけれる
というのが、この評価基準のもっとも優れた所だと思います。


例えば、国内作品で言うと、若竹の葉村晶シリーズとか芦原すなおの雪のマズルカなんかは、たしかに名探偵役が苦悩しています。
というわけで、名探偵の苦悩度はBに当てはまるわけですが
おなじBに分類される、頼子のために、とは明らかに路線が違います。


それをはっきりさせるのが、ミステリ度だと思っています。
類似作として、米澤の夏季限定、城平の名探偵に薔薇を、あたり。


名探偵の苦悩度が高くても、ミステリ度が低ければ
それが、後期クイーン問題と関係ないことが、レビューを読む側にハッキリと伝わる、と思う。


そもそも名探偵の苦悩は
1.後期クイーン問題としての名探偵の苦悩(法月、氷川、殊能、麻耶)
2.文芸設定でかつミステリとしての名探偵の苦悩(はやみねかおる、米澤、城平)
3.文芸設定としての名探偵の苦悩(若竹、芦原)
の三つに別けられると思う。


1.は言わずもかな、そのまま、後期クイーン問題への取っ掛かりを見せる作品。
2.はあやつり問題とか、名探偵の介入よって起こる事件などの、ミステリ的課題で名探偵を苦悩させる作品。
3.はミステリ的課題ではなく、夫の死だとか、犯人による暴行なんかで、名探偵が苦悩する作品。


いや、そんなことぐらい最初から区別してるって?
まあそりゃそうなんだろうけどさあ……


それにこの分類法だと、青春小説について触れてないよね。
例えば、法月の密閉教室とか、有栖川の学生アリスとかさ。
ああいうのも、名探偵の苦悩の一種といえるんじゃないかなあ。
(有栖川のは、ワトスンの苦悩だけどさ)


にしても、関田涙は難しいなあ……
もういっそ「別に普通の作家だよ」と切り捨てても良い気がしてきた。
本人のサイトの日記やら掲示板での応答を掘り返してるんだけど、どうもピンとこない。


切り口としては、まず「偽りの証言問題」や「あやつり問題」と関連する、一人称小説について。
これは、エルの方で詳しく言及しているそうなので、そっちを読んでから詳しく考える。


次に、ネットの書評でよく見かける「姉萌え」について、萌えミステリの系譜と、萌えとバトルの両立をしているネギま(!?の存在でよりいっそうこの路線を強化できると思う)辺りを例にして、書評自体を論じるとか。
こっちがまあそこそこ、面白くは書けそう。
ただ、大げさな表現を使うと他人に喧嘩売るような内容なので、微妙。
赤ペンツンデレ先生のシリーズでやるなら、迷わずこれ。


あと、シリーズ作品の完結、という路線で話を進めるのもいいかもしれない。
国内ミステリのシリーズで完結してる作品って、ごくわずかしかない、みたいな切り口。
これだと、関田涙の話じゃなくなるからなあ。


とか何とか言ってたら、新刊出てるじゃないか(汗
青い鳥文庫だからか、気づかなかった。
要チェックですね。