東野圭吾:どちらかが彼女を殺した 三点(五点満点)

この小説の結論は読者に委ねられている、と思われがちだが、それは「ミステリは真犯人を書かなければいけない」という前提があって初めて成立する。
あくまでこの小説の結論は「真犯人がどちらかであると推理することができる」というもので、真犯人自体を読者が自分の手で示す必要は全く無い。
また実際に、真犯人を突き止めるデータを検証し、論理的に真犯人を名指しすることができたとしても、それが「テクストの中で示された最後の真実」で無い以上、最後から二番目の真実である可能性が残されている。
この作品だけでなく摩耶雄嵩などにも見られるリドルストーリーのようなオチを取り扱うとき、テクストという絶対無二の真実が真実を語っていない以上、それをそのまま受け止めるしかなく、その上で「どうしてこのような構成なのか?」を考えるのが生産的であると思います。