さまよう刃:東野圭吾

少年犯罪の被害者の苦悩や周囲の悩みを扱った長編小説。加害者家族を描いた「手紙」と対になるように、被害者家族を描いている。
一応ミステリとしての密告者は誰か? というフーダニット要素があるものの、理詰めで考えるまでも無いもので、ミステリとして読むと薄い。
だけれども、小説としては濃厚。安易な肯定や安易な否定をせずに、考え続けることの大切を書いているのは東野圭吾らしく感じた。
ただ、結論の意外性、そこへいたる地続きの論理が「手紙」と比べていると今一歩足りなかった。延々と思考と議論を続ける「手紙」の方を高く評価したい。